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白刃の滝から浮かび上がる
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「もう、降りましょうよぉ」
後ろで西蔵が情けない声を出しているが、メグは知らん顔で潮風を満喫していた。
「ちょっと、海から鳥が飛び出してるよっ」
羽を広げた小さい生き物が見下ろす海の波間から勢いよく飛び出し、飛行を続けてまた海に戻っている。
「…あれはトビウオっていう魚です。もう、本当に降りてくださいぃぃ」
メグは今、マストの上にある見張り台に立っていた。
西蔵は見張り台に上るためのはしごにつかまっている。
メグは港の友人に頼んで停泊する船の甲板には上がったことがあったが、動いている船には乗ったことがなかった。

 

昨夜横になった後、メグたちは西蔵が起こしに来るまで目が覚めなかった。
西蔵は昨夜の闇に溶け込む全身黒装束ではなく、丸首の白い半袖を被り、黒のズボンをはいていた。
その格好を見ただけならば、すれ違う船も海賊とは思わないだろう。
深い眠りのわけは薬を盛られたに違いない。
しかし、その間に特におかしなことをされた形跡もなかった。
運ばれてきた食事をすませ、メグたちは箱をのぞきこんで夜着を着替えた。
一枚布のワンピースもあったが、ペラペラと薄く心もとない。
まもりと相談し、おなじように薄くとも動き安いよう、赤の長袖に黒のズボンを履いた。
西蔵のような白が箱に入れられていなかったのは意図的だろう。船員にまぎれないように目立つ色を着させられるらしい。
ともかく、いつまでも暗い穴倉のような船室にいる気にはなれず、着替え終わったメグとまもりは甲板に移動した。
晴れ渡った青空の下、陽を受けて輝く波間をすべる船は、メグにとっては感動だった。
まもりはフレーダー公国からの移動で一度船旅を体験しているためかメグよりは落着いている。
不動を伴って、甲板の散策をしながら様子を見るとメグから離れた。
西蔵と残されたメグは、最初は舳先を陣取って速さを楽しんでいたが、船員の一人が見張り台に上がって降りるのを見たら我慢できず、嫌がる西蔵を脅しつけて見張り台によじ登った。



西蔵は登り切ってからずっと「降りる」を連呼している。
「降りたいなら一人で降りな」
「そんなぁ」
西蔵のことはもう無視をして、メグは眼前の景色を心ゆくまで楽しむことに専念する。
顔をくすぐる潮風が髪を優しく剥いていく。
波の輝きの変化を見ているだけで一日ここにいられる気がする。
メグが黙っていると西蔵も邪魔をしてこなくなった。
しばらく何も考えずに海を眺めた後、小さくつぶやいた。
「いいねぇ、この景色」
「同感だ」
後ろから聞こえた西蔵とは違う声にメグは振り向いた。
「あんた」
雲水がはしごに手をかけ、メグを見ていた。
西蔵と同じ白と黒の軽そうな服が、風を受けて小さくはためいている。
闇夜に浮かび上がる姿は威圧感があったが、今はいくぶん雰囲気が和らいで見えた。
「俺も雲水という名前がある。「あんた」はないな」
「西蔵はどうしたんだよ」
「なんとかしてくれと降りて泣きついてきた。今は他の仕事をさせている」
雲水が見張り台に乗り込んできたので、メグは狭い中でも端に身を寄せた。
「あんた暇なのかよ」
「ああ。いちいち俺が指示するまでもない」
「偉そうにしてるくせに。余計な人間は船にはいらないんじゃないかい」
「そうだな」
挑発するために嘲笑ったが、雲水は静かに受け流した。
「いつ船を降りるんだよ」
「4日後だ」
雲水が断言したのでメグは少し驚いた。
船の航行というものは多少なりとも誤差があるのではないだろうか。
メグの驚きを読み取って雲水が続けた。
「阿含は海図一つで障害の最も少ない、最速の航路を示す。天候が変わろうと、あいつが4日といえば4日だ」
普通の船は慣れた航路でも天候によって進むべき場所を外れ、日程が変わることがあると聞くのに。
海図だけで海の中まで見通すというのだろうか。その指示通りの動きができる船員達がそろっていると?
この海賊を彼らが知らない海域に追い込んで捕らえようとしても無駄になるのではないか。
よほど戦力に差をつけて、破壊するしかないかもしれない。
「だったら、あんたもしっかり船を動かしなよ」
「今は手に余るじゃじゃ馬の世話をするのが仕事だ」
嫌味に嫌味で返され、メグは雲水を睨みつける。
メグの険悪な表情を見て、何故か雲水は微笑んだ。
「なんだよ」
今まで真顔しか見せなかった雲水が急に表情を崩したので、メグは一瞬戸惑う。
「いや、船室に閉じこもってくれる方が楽だと思っていたが、元気がいい姫君というのは付き合いやすいな。こちらも遠慮がいらない」
メグを馬鹿にしているわけではないようだが、誉められた気もしない。
「俺たちは女性と接する機会がないからな。遠巻きに眺めるか、囃し立てるくらいしかできないんだ。昨日は本当にすまなかった」
坊主頭を下げられて、メグはようやく肩に入れていた力が抜けた。
誘拐などしかけてくる外道な海賊ではあっても、メグやまもりに危害を加えることはしないようだ。
「いいよ、もう。私らは客なんだろ。しっかりもてなしてくれよ」
メグが言うと雲水が顔を上げた。
「この船でできる限りは、そうしよう。では、そろそろ降りてもらおうか。ここは風が強い。大事な客人に風邪を引かせるわけにはいかん」
「わかったよ」
素直に頷くと、雲水が柔らかい表情で手をさしのべてきた。
その顔になんだか苛立って、差し出された手を払いのける。
「自分で登ったんだ。手助けはいらないよ」
「降りるときは足が竦むものだが・・・まあ、いい」
雲水はそう言って先に少し下りた。
梯子にとどまる雲水の様子を上からのぞき込んで、メグは目元を押さえた。
足下がよろけ、体を支えるために見張り台の縁につかまる。
下に見えた甲板の遠さに目眩がした。
登るときには上しか見ていなかったし、周囲を見回すにも真下は見なかった。
こんなに高かったなんて。
「言っただろう。足が竦むと。ほら」
いつの間にか戻ってきていた雲水が、メグの前に回り込んだ。
反論することもできないメグはされるがままに背中に背負われてしまう。
「つかまっていろ」
足は力が入らないなりに雲水の腹の前で交差させ、首に回させられた腕には少し力を込めた。
「よし。目はつむっていろ。暴れるなよ」
雲水は立ち上がってメグを背負ったまま梯子に移り、下に続く網をゆっくりと降り始める。
偉そうな物言いに腹を立てる余裕もなく、しっかりと目を閉じてひたすら腕に力を入れていた。


 




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やまだ様

読み返していただけるって、書いている方としてはとってもうれしいです!
またお暇ができたらぜひ(^^)コメントいただけて元気になりました。
次のお越しをお待ちしております~。



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史乃様


いらっしゃいませ!よかった~たどり着いていただけましたか。
清らかで美しすぎる雲水はどこでも憧れの的ですよね!好きにならずにはいられませんよね!
こんなすばらしすぎる兄を持って、一生雲水の呪縛の中にいる阿含は気の毒というかうらやましすぎるというか!
雲水も阿含の虜だからお互い様ですけど・・・やっぱり阿含がうらやましい!憎んでいいですか(笑)
いえ、もちろん大好きですが、阿含も。

おとうとと一緒はもう少しラバは恋愛要素にしようかと思ったんですが、とりあえずジャブということで兄弟愛に押さえました。
またラバ雲も書きたいです。
西遊記はもうちょっとは続けたいと思いますので、また読んでいただけるとうれしいです。

ありがとうございました!


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小梅様


たまにで十分です!どうぞお気軽に遊びに来てください。
よろしければ、メールもご利用くださいませ(^^)
小梅さんにとって笑顔の1年になりますように!
ご体調にはお気をつけて、萌えを楽しんで栄養にしてください~。

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