「ようこそ、シーサーペントへ」
船の舳先に置かれた木箱に、髪を一つに結んだ男が大股を開いて腰掛けている。
目元を覆っていた色眼鏡をずらし、メグ達に笑いかけた。
その横には顔中に傷を負った大男と、髪を逆立てた額にホクロの小柄な男が表情のない顔でこちらを見ている。
髪を結んだ男が立ち上がった。
メグたちの方へ歩み寄ってくる。
メグとまもりは一歩、また一歩と後に下がるが、すぐにマストに背が当たってしまった。
「逃げるのはもう終わりぃ?」
「近寄るんじゃないよっ」
手を伸ばしてきた男にメグは右手に持っていたナイフを向ける。
「おっと、ヤバイもんもってんじゃん。それで遊びたいワケ?」
メグのナイフがオモチャだとでも思っているのか、男は無造作に距離を詰めてくる。
メグは必死でナイフを前に突き出したが、あっさりとその手は男にとらわれてしまった。
「おおっと、これもいい細工してあるじゃねぇの。もらっとくわ」
「うっ」
男がメグの手を捻り、ナイフは簡単に手を離れる。
「メグっ」
まもりがメグをかばうように男との間に立った。
「ククッ、せっかくのオモチャだからぁ、相手してもらうぜ。オイッ」
男の合図で、まもりはマストの横に立っていた男に両腕をつかまれ船の端まで引き摺られる。
抗議の声を上げて身をよじるが、男はびくともしない。
一人残されたメグの前に髪を結んだ男がナイフをもてあそびながら立ちふさがる。
「ダンスでも踊ってもらおうか。どうだぁ?」
男の声に周囲から野太い歓声が上がる。
「だれがっ」
メグは顔を逸らした。
ドレスの腰の辺りを両手で強く握り締める。
「いいぜ、俺が躍らせてやるよ」
風を切る音で、メグは咄嗟に左に避けた。
マストに突き刺さったナイフを振り返る。
避け切れなかったため、ドレスの腰の辺りが破けていた。
「おお、なかなかいい動きするじゃねぇか」
メグとは距離をとるように後ろに下がりながら、男はまた手を閃かせる。
メグは反対に飛びのいた。
新しいナイフが肩を掠めていったと思った途端、動けないうちに音だけがメグの横を通り過ぎる。
肩から袖先まで、何箇所も切り刻まれて、ドレスからメグの腕が見え始めていた。
男たちが口に指を当てて下品な笛で囃し立てる。
「もっと逃げねぇと、すぐに丸裸だぜ」
男が投げたナイフは動けないメグの胸の横を掠めて行った。
布だけを切り裂いていく男のナイフさばきにメグは意識を失いそうになる。
新しいナイフを男が構えた。
ぎゅっと目を閉じて胸の前で腕を交差させる。
「喝っ」
