白刃の滝から浮かび上がる
「喝っ」
耳を劈く大声にメグの体が揺らいだ。
目を開けると、前に誰か立っている。
剃りあげた髪の短い頭。他の男達と同じ真っ黒い服。
「何をやっているんだ、お前たち!阿含!!」
「あ゛ー?暇つぶし」
坊主頭に怒鳴られ、髪を結んだ男は耳を搔きながらそっぽを向いた。
「暇つぶし、じゃないだろうっ。これだけ揃って、どうして阿含を止めない、一休っ」
「す、すんません。阿含さんが海賊らしくやろうって…」
「あ゛?人のせいにすんのか?一休」
雲水に詰め寄られながら舳先まで戻った阿含は、ホクロの一休を小突いてから最初に腰掛けていた箱に座りなおした。
「いいいいや、だって、阿含さんが邪魔するなって言ったじゃないっすか」
男たちの言い争いは耳から通り抜け、メグは膝から崩れ落ちた。
注意が逸れた隙に、まもりが横からメグに抱きついてくる。
「す、すまん。ワシらも調子に乗りすぎた」
顔に傷の大きな男が雲水に向かって体を縮める。
「ご婦人を怯えさせるとは…皆、同罪だ。覚悟しておけ」
「えええ~雲水~~~ぃ」
甲板を取り巻いていた男たちが情けない声を上げる。
雲水と呼ばれた坊主がメグたちを振り向いた。
まもりとお互いに手を強く握る。
黒目の小さい切れ長の目が冷たい視線をで見下ろしてきた。
「こいつらの非礼は詫びる。だが、お前たちもウロウロするな。立場をわきまえろ」
メグはその言い様に頭に血が上った。まもりの手を放して勢いよく立ち上がる。
「何言ってんだいっ、あんたらが勝手に連れてきたんだろう!?あたしらが命令される言われはないよっ」
啖呵を切ったメグに驚いたのか、雲水の細い目が少しだけ大きくなった。
まもりも続いて立ち上がる。
「無理矢理招いたのだから大人しくしろと言う方が筋違いよ。私たちは海に飛び込んで帰らせてもらってもいいんだから。それで貴方たちの目的が達せられる?」
雲水はまもりとメグを交互に見比べて言葉を失っていた。
「クックックッ、面白れぇじゃねぇか。深窓の姫君がこんなに威勢がいいとはな」
まだナイフをもてあそびながら阿含が笑った。
メグの体が反射的に強張る。
すぐにまもりがメグの背に腕を回す。
「阿含。ナイフをしまえ。無用におびえさせるな。本当に飛び込みかねんぞ」
雲水がメグ達に背を向けて、阿含の元に歩み寄る。
阿含は薄笑いを浮かべながらナイフを雲水に渡した。
「あ゛ーヒメって柄じゃねぇなぁ、こいつら。興が冷めた。オレ寝るわ」
阿含は勢いを付けて箱から飛び上がるように立ち上がり、メグ達には見向きもせず船尾に消えていった。
阿含が横を通り過ぎるときに精一杯睨みつけて見送るが、空気のように無視をされる。
メグは雲水を向き直る。
雲水は阿含が腰掛けていた箱の前に立ち、腕を胸の前で組んで、メグたちに告げた。
「お前達に危害は加えさせない。船室と甲板では自由を許す」
「あんたのような下郎にお前よばわりされたくないね」
メグは雲水の言葉を遮る。
「雲水さんに向かって、なんて口をっ」
静かに雲水の横に立っていた一休が、突然目をつり上げた。
メグに向かって手を鳴らしながら歩み寄ろうとしたのを、雲水が片手で制す。
「でも、雲水さん」
「俺たちはお前達の家臣じゃない。お前達は客人ではあるが、俺たちの支配下にあることを忘れるな」
偉そうな物言いが気に障る。メグは表情を変えない雲水の冷たい顔を睨んだ。
「本当にこいつらお姫さんなんすか?ひょっとして囮じゃ」
一休が訝しそうにメグとまもりの顔をジロジロ見比べる。
「それはないだろう。あのサファイヤの指輪は「火蜥蜴の雷」、ルビーの首飾りは「敗者の涙」。サラマンド王国とフレーダー公国の王家に伝わるものだ。身代わりごときが身に付ける事はできない」
メグは咄嗟に左手につけている指輪を右手で覆った。
まもりも首元に手を当てている。
正式なパーティーだからと用意された王家の秘宝が、誘拐の目印にされていたとは。しかし、ニセ者扱いされて船から放り出されるのを防いでくれたことにもなる。恨むべきか喜ぶべきか。
雲水はメグたちの動揺など目に入らない様子で話を続けた。
「世話役として不動と西蔵をつける。用があればいいつけろ。危険からは彼らが守る」
雲水が視線を甲板の左端に移すと、並ぶ男達から小柄な二人が一歩前に出る。
雲水が言い終わるのを待って、まもりが厳しい口調で問いかけた。
「貴方一人の約束を船員全員が守るという保証はあるの?あの阿含という男が?」
雲水は静かに肯定した。
「裏切りはない。それがこの船だ」
雲水の言葉を受けて甲板を取り囲む男達が一斉に左腕を胸の前で折り曲げ、掌を広げて真っ直ぐに伸ばした。右手は固く握って広げた左掌の中央に押し当てる。そのまま全員が目を閉じ、頭を下げた。
肯定の合図、ということだろうか。
チラリとまもりの表情を見ると、眉根を寄せて周囲の様子を窺っている。
儀式的な礼を見せられた程度で、簡単に安心はできない。
「お前達が信じる必要はないが。しばらく航海が続く間、ビクビクして暮らすのも面白くないだろう」
「どこに連れて行くんだよ」
「4、5日はかかる。行き先を知る必要はない」
雲水はメグの問いに答えると要件はこれまでとばかりに二人に背を向けた。
同時に不動と西蔵がメグ達の前に走り出てくる。
「どうぞ、船室に戻ってください」
二人が手を広げてメグ達を抜け出してきた船室に誘導する。
まもりに手を引かれ、メグは男達に背を向けた。
******
拍手、URL請求ありがとうございます!
雪ですよ~降ってます。
寒い、寒い。
猫たちが私の膝の取り合いをしてくれて、モテモテ気分です~。
耳を劈く大声にメグの体が揺らいだ。
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坊主頭に怒鳴られ、髪を結んだ男は耳を搔きながらそっぽを向いた。
「暇つぶし、じゃないだろうっ。これだけ揃って、どうして阿含を止めない、一休っ」
「す、すんません。阿含さんが海賊らしくやろうって…」
「あ゛?人のせいにすんのか?一休」
雲水に詰め寄られながら舳先まで戻った阿含は、ホクロの一休を小突いてから最初に腰掛けていた箱に座りなおした。
「いいいいや、だって、阿含さんが邪魔するなって言ったじゃないっすか」
男たちの言い争いは耳から通り抜け、メグは膝から崩れ落ちた。
注意が逸れた隙に、まもりが横からメグに抱きついてくる。
「す、すまん。ワシらも調子に乗りすぎた」
顔に傷の大きな男が雲水に向かって体を縮める。
「ご婦人を怯えさせるとは…皆、同罪だ。覚悟しておけ」
「えええ~雲水~~~ぃ」
甲板を取り巻いていた男たちが情けない声を上げる。
雲水と呼ばれた坊主がメグたちを振り向いた。
まもりとお互いに手を強く握る。
黒目の小さい切れ長の目が冷たい視線をで見下ろしてきた。
「こいつらの非礼は詫びる。だが、お前たちもウロウロするな。立場をわきまえろ」
メグはその言い様に頭に血が上った。まもりの手を放して勢いよく立ち上がる。
「何言ってんだいっ、あんたらが勝手に連れてきたんだろう!?あたしらが命令される言われはないよっ」
啖呵を切ったメグに驚いたのか、雲水の細い目が少しだけ大きくなった。
まもりも続いて立ち上がる。
「無理矢理招いたのだから大人しくしろと言う方が筋違いよ。私たちは海に飛び込んで帰らせてもらってもいいんだから。それで貴方たちの目的が達せられる?」
雲水はまもりとメグを交互に見比べて言葉を失っていた。
「クックックッ、面白れぇじゃねぇか。深窓の姫君がこんなに威勢がいいとはな」
まだナイフをもてあそびながら阿含が笑った。
メグの体が反射的に強張る。
すぐにまもりがメグの背に腕を回す。
「阿含。ナイフをしまえ。無用におびえさせるな。本当に飛び込みかねんぞ」
雲水がメグ達に背を向けて、阿含の元に歩み寄る。
阿含は薄笑いを浮かべながらナイフを雲水に渡した。
「あ゛ーヒメって柄じゃねぇなぁ、こいつら。興が冷めた。オレ寝るわ」
阿含は勢いを付けて箱から飛び上がるように立ち上がり、メグ達には見向きもせず船尾に消えていった。
阿含が横を通り過ぎるときに精一杯睨みつけて見送るが、空気のように無視をされる。
メグは雲水を向き直る。
雲水は阿含が腰掛けていた箱の前に立ち、腕を胸の前で組んで、メグたちに告げた。
「お前達に危害は加えさせない。船室と甲板では自由を許す」
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メグは雲水の言葉を遮る。
「雲水さんに向かって、なんて口をっ」
静かに雲水の横に立っていた一休が、突然目をつり上げた。
メグに向かって手を鳴らしながら歩み寄ろうとしたのを、雲水が片手で制す。
「でも、雲水さん」
「俺たちはお前達の家臣じゃない。お前達は客人ではあるが、俺たちの支配下にあることを忘れるな」
偉そうな物言いが気に障る。メグは表情を変えない雲水の冷たい顔を睨んだ。
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一休が訝しそうにメグとまもりの顔をジロジロ見比べる。
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メグは咄嗟に左手につけている指輪を右手で覆った。
まもりも首元に手を当てている。
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猫たちが私の膝の取り合いをしてくれて、モテモテ気分です~。
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catou様
いらっしゃいませ~!
読みに来ていただけてうれしいです。
こっそりですが楽しく通わせていただいておりますv
お忙しいとは思いますが、どうぞお体にお気をつけてがんばってくださーい!
-------
刈谷様
楽しんでいただけてうれしいです!
私もまだまだ大好きです!!お仲間がいることを確認できてし・あ・わ・せv
ぼちぼち更新しますので、覗いてやってくださいv
-------
サイ様
私もどこまで阿雲に惚れ込めばいいのかわからないほどLOVEなんですが、どうしたらいいでしょうか…!!
人様の阿雲が読みたいです!サイ様はサイトはお持ちではないですか!?
美麗な雲水を一筆お願いいたします。
御期待に添えないほど今までどおりぬるい18禁ですが、皆様が大人ということに安心してたまーにやらかすことがあるかと思いますので、よろしくお願いします。
-------
きむ様
大学生、お待たせしました!
鈍い雲水が大好きです(^^)
王道すぎるのはわかっているんですが、そこがいい…!!
やっぱり双子は結ばれてもすれ違ってほしい!
きむ様も寒くなりましたので、どうぞお体にはお気をつけください。
-------
みつ豆様
本当に、ずれまくって阿含には気の毒なんですが(笑)
阿含も雲水のことを誰よりもわかっているけれど、表面的なところを勝手に良い方へ解釈してしまうからずれていることには気がついていない…。
幸せだからいいか!
ラバはいい人ですよ!だから雲水の中でも「イイヤツ」止まり(笑)
でも一応ラバ雲も目指しているんです!
こちらこそ、ありがとうございます~v
-------
niyo様
わーい!読んでくださってありがとうございますv
確かに、阿含のドレッドはスパ船長と被る…そして、想像したらすっごくカッコイイ!!
阿含ってビラビラした度派手衣装似合いますよね~。
今のところ船の上ではナーガの皆はシンプルな隠密黒服か、作業服のようなTシャツにズボンの予定です。
まあ雲水は何を着ても美しいですけれど!(笑)
阿含は世界一の宝物を手に入れてはいますが、なかなか阿含を安心させてくれないんですよね~。
そこが阿含がいつまでも執着し続ける一つの要因かもしれませんが!
雲水はきっと阿含が自分のものだなんて思ってないんだろうな、とか。
思ってよ!お前だけのものに決まってんだろ!!って阿含は思っているのに!!
うう、そんな雲水が好きです。
niyoさんもいろいろお忙しいかと思いますが、どうぞご自愛くださいませ。
更新、楽しみにしていますv
あ、クリスマスローズ、今年はだいぶん大きくなりました!春が楽しみです~。
catou様
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刈谷様
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サイ様
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御期待に添えないほど今までどおりぬるい18禁ですが、皆様が大人ということに安心してたまーにやらかすことがあるかと思いますので、よろしくお願いします。
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きむ様
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王道すぎるのはわかっているんですが、そこがいい…!!
やっぱり双子は結ばれてもすれ違ってほしい!
きむ様も寒くなりましたので、どうぞお体にはお気をつけください。
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みつ豆様
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阿含も雲水のことを誰よりもわかっているけれど、表面的なところを勝手に良い方へ解釈してしまうからずれていることには気がついていない…。
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ラバはいい人ですよ!だから雲水の中でも「イイヤツ」止まり(笑)
でも一応ラバ雲も目指しているんです!
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niyo様
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今のところ船の上ではナーガの皆はシンプルな隠密黒服か、作業服のようなTシャツにズボンの予定です。
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思ってよ!お前だけのものに決まってんだろ!!って阿含は思っているのに!!
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